時計を買うということ。

オーデマピゲ ロイヤルオーク エクストラシンSS(15202ST)を買って1年が経過した。

この時計は自分の時計史(たった8年程度のものだが)の中で大事な時計で、「時計を買う」という行動について、色々と考えてしまったので現時点での考えをまとめてみる。

この不肖なブログは開設以来3年が経過しようとしているが、ずっと書いていることは一貫していない。ブレブレである。大きい時計が良いと言ったり、手首の大きさに合う時計が良いと言ったり、読み返すたびに恥ずかしくなるくらい、とにかく”テキトウ”だ。

それだけ自分の中で時計選びや時計に対する向き合い方が変化している証拠だろうと思う。

気が向けば冗長迂遠な駄文にお付き合いいただきたい。

エクストラシンとの“馴れ初め”

この時計を知ったのは2012年。

機械式時計に興味を持ち、初めての機械式腕時計、オメガ3539.50を買った年。

ちなみにこのオメガは視認性もよくサイズも38mmと控えめで、我ながらいいチョイスをしたと思う。

「どうやらロレックスよりも高い世界三大、雲上といわれる時計があって、パテックフィリップ、オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンというらしい。パテックフィリップのノーチラスとオーデマピゲのロイヤルオークはジェラルド・ジェンタがデザインして・・・」という具合だ。

当時は色付きの時計(ケースがRGやYGなど)には興味はなかった。そういう時計をつけている自分を想像できない、というのもあるし、SSの時計の”日常性”や”親しみやすさ”、”シンプルな見た目”が好きだった。

ノーチラスやロイヤルオークの独特のデザインには驚いたが、ノーチラスは文字盤の色もなんか地味だしオジサン臭い(失礼!)と思ってしまった。ロイヤルオークはとにかくカクカクしていて曲線が少なくて、キレていてブレスレットのデザインもカッコいいと思った。

特にロイヤルオークの中でも復刻されたエクストラシン、15202STが良く、15400STは実際につけてみると大きいし文字盤も間延びしているように感じた。エクストラシンはギュッと詰まっている感じがよかった。それは恐らく文字盤と風防の距離であったり、ケースの薄さやベゼルと文字盤の比率、ケースの大きさからきていると思うが。

SSで一番欲しいのはエクストラシンだ!と思ったわけだが、当時、時計一本に200万円を超える価格は想像もつかず、まさに雲の上のような存在だった。

それから時は流れ、先にオジサン臭いと思っていたノーチラス(お上品な色気のあるRGのプチコン)を買ってしまったり、パネライの47mmとかクロノマットとか果てはデイトナのアフターダイヤとか、色々買った。実は一度ノーチラスの5711/1A-010も予約していて順番が回ってきた時があったのだが、本当にお金がなく、情熱的に欲しいと思わなかったのもあってスルーしたことがある。

新品中古、正規並行を問わず時計との出会いは縁だと思う。エクストラシンを買う縁がきた、それがたまたま去年だった、ということ。結局、未使用品を並行ショップで2012年当時の並行価格の二倍!(価格ドットコムの初値は202万円とある)で購入した。

そして幸いにも、まだ売らずに1年間手元にある。

時計を買うということ

時計を買うというのは、その時計が「欲しい」と思って買うわけだが、その感情が生まれる「動機」や感情の「熱量」は様々だと思う。

見た目、機能、つけ心地、精度、使用目的など、自分が重要だと思う部分、つまりその物に対する主観だけで時計を買うだろうか。そうではないと思う。

そもそも、その主観も色々な外的な影響を受けるだろうし、時計を買ってきた経験、時計に関する知識、年齢などとにかく色々な個人を反映している。これを仮に“主観的な動機力”と呼ぶことにする。

そしてさらに、第三者の規定するブランドバリュー、リセールバリュー、評価、自分が所属するコミュニティーでの序列などなど(この時計はしる人ぞしるブランドの、、誰とも被らない、、誰もが憧れるブランドで、、あの時計評論家が良いと言っていた、、これを買って売れば利益になる、、この時計は1000万円もすると言いたい、、)挙げればきりがない。これを“客観的な動機力”と呼ぼう。

2つの“動機力”が混ざり合って、「買う」という行動にでると考えている。

例えば、自分は「買う」という行動に100の“動機力”が必要だとする。

時として刹那的に主観的な動機力が100以上生まれることがある。リセールが悪かったり、人からあまり評価されていなかったとしても。つまりは衝動買いである。(それがすぐに手元から離れていくかはまた別の話だが。)

また、主観的な動機力が10程度しかなくても、買ってすぐ売って100万円の利益がでるなら、客観的な動機力は100以上になる。

このように、自分にとって時計を買うという結果は同じであっても、その過程(動機力)は様々である。

なので、仮にデイトナSSをリセールが良いので買いたいです!という人が居ても別に腹も立たないし、時計趣味を馬鹿にしているとも思わない。時計に求める価値は人それぞれだ。

時計を趣味とする者として知りたいのは、人のその動機力の中身、時計を買うに至った過程である。そしてその中身について他人と交流を持ちたいというのがブログを開始した理由であったように思う。しかし動機力の内訳を文章にするのは、自分にとってなかなか難しい作業になるので、いつも購入報告だけになってしまうのは、恥ずかしい限り。

ではエクストラシンはどうなのか

自分がそれを手に取る機会があったときに、まずお金の工面ができるかを考えた。

それはクリアできた。

それから動機力である。

見た目はカクカクしシャキッとしていて、男性的なかっこよさを感じた。サテンが均一で鏡面のように輝く。そして挿入される鏡面との境(エッジ)がくっきりしていてメリハリがあってかっこいい。文字盤の青も明るすぎず、好み。ギョシェも美しい。

現在のスポーツウォッチと分類される中では薄くて軽い。針やインデックスは細くて、文字盤と風防の距離は近くて、フォーマルとインフォーマルの中間である(これは時計誰かの受け売り)。サイズは39mmで手首への収まりもいい。SSだし仕事のときにもプライベートのときにも使えそうだ。ムーブメント、外装の仕上げも美しいと思った。ただ、ブレスのフィッティングは1コマでしか調整できないので、汗をかく夏場はキツく感じるかもしれない。そしてキズが目立ちそうだ。Cal.2121故障大丈夫か・・?などと多少懸念もあった。

マーケットでは価格が絶賛高騰中で、ブティック限定だが受付も実質止まっていて自分は正規では入手できないだろうが、100万円以上のプレミアを払うのはどうか・・・・。

考えるうちに、ジェラルド・ジェンタの最初期の作品なので若い時のエネルギーがそのまま現れていて、自分がこれをつければエネルギーを貰えるんじゃないか、という謎の妄想も出現した。

しかし、最後のひと押しとなったのは、自分が時計の知識がまだ大して無かったときに欲しいと思った時計であること、だった。

ブログを初めて以降、客観的動機力が強くなっていたように思う。時計をある程度の期間所有して触れ、その時計を自分なりに理解し、自分の主観を磨く過程をサボっていた。避けていたかもしれない。主観的動機力が強かった時期の時計を購入すれば長く付き合えるかもしれない、と考え買った。

そして1年はもったが、今後また売ってしまうかもしれない。

時計は買って終わり、ではない。使うこと、そして売ることもある。

それらについてもまた気が向けば書きたい。

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